にぎわい戻そう 店子激励
酒瓶が落ちて割れ、店に入っただけで酔いそうなバー、壁が崩落し大きな穴が開いた古着屋・・・。
福岡県西方沖地震から約一ヶ月。再び余震が襲う中、街のにぎわいを取り戻そうと奮闘する女性がいる。福岡市中央区大名だけで百軒以上の店子(たなこ)を持つ不動産会社「福山不動産」社長の藤井昌さん(62)だ。二十日の余震でも防災リュックを担いで路地に飛び出し、店子の被災把握に奔走した。
大名で不動産業 藤井さん
商店再開支援へ奔走
この日は早朝から差し入れを手に約三十軒を回った。「ドアが開かない」「ひびが入っていたタイルが落ちた」。補修や原状回復への相談に応じ、必要なら物件オーナーにも確認を求める。その間も休みなく掛かってくる携帯電話に対応。すべてを終えて会社を出たのは午後十一時過ぎだった。
大名で生まれ、幼いころから街を見つめてきた。小料理屋の開店資金を稼ごうと福山不動産で働くうちに「若い人の世話をしたい」との思いが生まれた。十年前には前社長に請われて社長に就任。出店を望む若者の相談に乗り、店のスタイルに合う物件を考える。熱心な姿勢にいつしか「大名の母」と呼ばれるようになった。
三月二十日の本震時は熊本県に旅行中。「福岡で地震」と聞いて飛んで帰り、惨状を目の当たりにして休日返上で店子の訪問を始めた。大手企業の手で天神地区の商業ビルが着々と復旧する一方、個人商店の多い大名地区は揺れの激しさも加わり、今なお地震のつめ跡がくっきり残る。
瓦が落ちた飲食店やガラスが割れた洋服店をこまめに訪ね歩き、補修への道筋を付ける。出先で携帯電話が鳴り小料理屋の女性経営者から「怖くて店に行けない。一緒に来て」と泣きつかれた事も。古着店経営の男性(26)は「地震後に電話したら、すぐ駆け付けてくれた。顔を見ただけでほっとする」と話す。
「頼られていると思うと、頑張らなきゃという気がわいてくる」と藤井さん。そんなバイタリティが復興を少しずつ前に進めている。防水シートや補修の為の足場が目立つ同地区を背に「ここは雑草みたいな街。たたかれても若いエネルギーで立ち上がっていってほしい」と力を込めた。
地震以降、大名地区をくまなく歩き、物件を紹介した店子を見舞う藤井昌さん